1990 年代以降に日本企業が世界で存在感を失った理由
1990 年代以降に日本企業が世界で存在感を失った理由
及川卓也氏は 3 つの要因があると考える。
要因 1 : IT 化を 「効率化の道具」 と過小評価
心理学の世界に 「正常性バイアス」 という言葉がある
客観的に見ると危機的状況に陥っているにもかかわらず、目の前の状況を過小評価して 「自分だけは大丈夫」 と楽観視したり、都合の悪い情報を意図的に無視するなどしてしまう特性のことで、危機から脱する機会を失う原因にもなり得る
日本は製造業で成功したので、過去の成功体験にとらわれていたのではないか?
モノづくりこそが日本の 「正業」 であり、IT は 「虚業」 という誤った認識
SIer の登場
SIer の功罪
将来の SIer はどんな存在になるか?
GitHub のテクノロジー担当副社長のジェイソン・ワーナー氏は 「SIer はより専門に特化していくことになる」 と述べる
専門とは、業界特有のソリューションであったり、特定の技術領域を指す
IT の価値を誤認した結果、自社に IT 活用のノウハウが蓄積されない 「SIer 丸投げ文化」 が形成されてしまったのでは?
要因 2 : 間違った 「製造業信奉」 から抜け出せない
ウォーターフォールの開発手法は、製造業におけるライン生産方式に共通するアプローチ
製造業のモノづくりと、今日のソフトウェア開発では、ゴールが大きく異なる
ウォーターフォールの開発手法は必ずしも悪いものではないが、製造業的なモノづくりのプロセスに捉われ過ぎるとどこかで機能不全に陥る
特に、SaaS によるサブスクリプションサービスなど、新しいビジネスモデルに基づくソフトウェア開発
LTV という考え方 → ユーザー獲得や満足度向上のために使えるコストの見立ても可能に / 利用状況把握も
製造業の調達や開発委託と同じ基準で考えると、ソフトウェア開発において安易に外注してしまうことにはリスクがある
オープンソース (以下、OSS) の採用は、製造業における調達と考えることができる
製造における生産性と品質を支えているのが生産技術という役割
これはソフトウェア開発では 「開発基盤」 と考えることができる
ソースレポジトリやチケット管理システム、継続的インテグレーションのための仕組みなどが整って初めて、高い生産性と品質が実現される
仮説検証に使われるのが、アジャイル開発手法や DevOps、継続的インテグレーション
マイケル・A・クスマノ氏は、著書 『ソフトウエア企業の競争戦略』 の中でソフトウェアに対する日米欧の考え方の違いについて興味深い分析を披露
現状のソフトウェア開発の多くは 「世界の工場」 としてのやり方を真似しただけになっている
「調達」 や 「開発委託」 における徹底したこだわりなどは踏襲できていない
要因 3 : サービス設計 〜 運用面での誤解
「当たり前品質」 「一元品質」 「魅力品質」 について知ることは、多くの日本企業が抱える課題を理解する助けになる
「無関心品質」 と 「逆品質」 は、一般的には品質と認識されることが少ない
ホテル予約アプリケーションにとっての一元的品質は、表示されるホテル数という 〝在庫〟
この在庫数をいかに増やすかが、顧客満足度を高める基本路線
例えば当たり前品質を高めることが唯一の道だと信じ込み、魅力品質を磨くことを怠っているような場合
近年 「Data is Oil」 (データは石油) という考え方がさまざまな産業に普及している
一つ目の懸念はデータへの期待が先行し過ぎている
参考文献
ソフトウェア・ファースト ― あらゆるビジネスを一変させる最強戦略